住宅ローン残高を見ながら金利について調べる
tl;dr
「金利が1%だ、高い」と名目金利だけを見て騒がない。もしインフレ率が2-3%あるなら、お金の実質的な価値がそれ以上に目減りしているということ。 したがって、1%程度で借りれているなら、実質的には安い資金調達と思ってOK。
金利について調べた
私は住宅ローンを組んでいる。つまりローン金利は家計に直結するので少し調べた。 なんとなく理解しているつもりだが、実際に日銀見通しなどを読んでおくのと、ネットニュースだったりXのポストだけを読むのでは解像度が変わる。 まず前提となる知識として以下を暗記する。
政策金利
- 中央銀行が金融政策として定める金利。日本銀行が決めている。これが名目金利の土台。そのまま住宅ローン金利や一般企業向けの貸出金利になるわけではないが、政策金利を操作することで間接的には実質金利が動くことが多い
- 好景気であれば金利を上げて引き締める。不景気(デフレ)なら金利を引き下げて緩和する。
名目金利
- インフレ率を加味しない金利. ローンの店頭金利はこれにあたる
実質金利
- インフレ率を加味した金利。
実質金利 ≒ 名目金利 - インフレ率で算出される。
「金利上がった」という文字列を見ただけで心拍数を上げない考え方の中心にあるのは実質金利といえる。例えば
- 借入金利: 1%
- インフレ率: 2.5%
の場合、実質金利は 1% - 2.5% = -1.5% になる。
つまり100万円を借りて、1年後に金利を含めた101万円を返すとしても、その間に物価が2.5%上がったなら、返す101万円の価値は借りた時点の100万円よりも小さくなる。 ざっくり言うと借りたほうがお得という状態。実際、銀行からお金をプレゼントされたわけではないが、インフレ率を下回る金利で長期間お金を借りることができるなら、 借金の負担は時間が経てば立つほど減少すると思って良い。
日銀レポートで見る
日銀の見通しでは、生鮮食品を除いた消費者物価指数(CPI)のの見通しの中央値は +2.4%, 2028年だと +2.0%となっている。 https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202607.htm
つまり仮に1%の金利で借りれるなら、実質マイナス金利状態であり、日本の銀行は実はかなり良心的にお金を貸しているということになる。 日本はインフレ率に対して、貸出金利が低く、借り手にとってオトクな状況が続いている。
事実、貸出約定データを見ると平均約定金利は約1.39%になっている。 https://www.boj.or.jp/en/statistics/dl/loan/yaku/yaku2607.pdf
ではお金を借りて、高金利の金融商品を買ったほうがいいのか?
ここまでお得にお金を借りれるとなると、このような邪な考えが浮かんでくる。 自動車ローンを持つ人がなぜか住宅を買うと、なぜかその自動車ローンが消えているとかいないとかいう話と似たような話かもしれない。
例えば利回り4%の米国債を運用するとして、日本で0.9%でお金を借りるとする。
ここでの単純な金利差は 4% - 0.9% = 3.1% となる。
仮に1億円借りて、為替や税金などを一切無視して計算すると
- 支払い利息: 90万円
- 米国債利息: 400万円
- 差額: 310万円
となる。つまり日本で安くお金を調達できれば、海外の高金利商品を買うだけで円の利益を得やすことが出来る。 長期間のゼロ金利・マイナス金利政策によって、このような金利差による利益獲得のスキームが成立しやすくなっていたことは事実だと思う。 では実際、単純に米国債を買っておけばプラスかというと、そんな単純な話ではない。ドルでの投資になるので為替リスクがあるからだ(さっきの計算では無視した)。 さっきの例ではドル円が1年で5%円高になれば、円換算では損失が発生する。私も円高のときは米国株を買っていた記憶があるが、最近はあまり買ってない。 為替先物予約などで為替ヘッジすればリスクは抑えられるが、その場合も予約するための費用(ヘッジコスト)はかかるため、円安の恩恵をそのまま受けるということにはならない。
俺達は投資家と外貨に貢いでいただけ?
このように日銀が金利を低く維持すると、円を実質的に安く調達でき、投資家はその資金で海外の資産に投資を行う。 そうなると資産を持っている人、つまり借入能力がある人がこれまで述べてきたような恩恵を大きく受けることができる。 しかし、そうだとしても単純に「貢いできた」とまでは言えないのではないか。
低金利政策には以下のような景気への刺激効果もある。
- 企業の資金調達がしやすくなる
- 住宅ローンかりやすくなる
- 雇用が維持しやすい
- デフレ抑制
低金利政策だからと言って、副作用だけを見て結論づけなくても良い。 「金利」と目にしたとき以下のようにステップを分けて考える。
- 名目金利だけではなく、実質金利もセットで見る
- インフレの見通しと貸出金利を比較する
- 為替、ヘッジコスト、金融政策の効果を考える(必要に応じて)
なんとなく整理
金利が上がった、というニュースを見て財布の心配をするのではなく、インフレ率と比べて金利が高いかを見る。 そう考えると日本国は金利が上がった、と言っても実質金利を見るとまだかなり低い水準であることがわかる。 今までがラッキーだったと思って過ごすか、生活水準を維持・向上するために収入を上げようとかそういった行動への転換は自由に決めれば良い。
その他: 収入とインフレ率について
インフレ率同等以上に収入が増えないと、実質的には収入が下がっているのと同じだ。 これは、収入が上がってないのに物価が上がっているなら、同じお金で買えるものやサービスは減るという考え方によるもの。 金利の話とは切り離して考えたほうがよい。実質金利の話と、家計の実質所得は別。
- 去年: 年収500万円、支出400万円
- 今年: 年収500万円、物価 +2%
となった場合、去年と同じ生活水準を維持するには408万円かかる。つまり手元に残るお金は100万円から92万円に減る。
実質所得 = 名目所得 / 物価水準 という式になる。
インフレ局面であれば 賃金上昇率 - インフレ率 がマイナスであれば、実質所得は低下する。
サラリーマンとしては、賃金がインフレ率に沿ってついていくかは重要になる。
子供の頃に春闘のニュースを見ても何もわかっていなかったが、ベースアップを勝ち取るのは重要だなと思う。
参考
わが国の経済・物価情勢と金融政策 - 日本銀行 証券用語解説集 - 野村證券 金融経済の基本 - 東海東京証券 貸出約定平均金利の推移 - 日本銀行 展望レポートのハイライト(20206年7月) - 日本銀行